06.21.19:55
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02.02.22:58
物書きの幻想~序章~
異変は突如、僕たちに訪れた。
気がつけば眠っていたのだ、そこは森の中。
夢ならばどれほどよかったことか。
僕たちは不思議な世界に迷い込んだ。
それはつい昨日の話だ
「先生ー!」
強くフローリングの床を蹴る音が家中を駆け巡る。
その音がだんだん大きくなる、そして僕の後ろで音が止んだ。
バタンッ
静かになったと思えばドアが勢いよく開いた。
「先生!」
耳が痛くなるほどの音量で叫ばれた。
「天草さん…そんなに大きな声で呼ばなくても聞こえているよ…」
何を慌てているのか、天草さんこと天草 雪梛は大きな声で僕を呼んだのだ。
「先生、次の取材場所が決まったんです」
「よかったじゃん」
「んな!もっと喜んで下さいよ!」
「何故?僕には関係ないぞ?」
そう、僕は妖怪のような非科学的なものを題材にしたただの小説家だ。
天草さんのような記者ではないので取材が決まろうが決まるまいが僕には知ったことではない。
そもそも僕はただ天草さんのいる雑誌編集部の扱っている雑誌に連載小説を載せてもらっているというだけなのだ。
天草さんとは決して特別な関係ではないし天草さんが何故僕の家に入り浸ることができるのか、それが不思議でならないのだが。
「それがスゴいんですよ!」
「なにがスゴいんだ?」
まぁ僕の母親が明るく元気な天草さんを気に入っているから簡単に家に上がれる、というのが原因だが。
「ある神社のお蔵に古い巻物があってなんでも妖怪退治に人が使ったものらしいんです」
「ふーん」
正直この手のものはガセネタの場合が多い、あまり興味はそそられないが。
自分自身、小説のネタも無いことだし天草さんが持ってきたネタだ…存分に活用させていただこう。
「興味なさそうですねぇ…一緒に行ってくださいよー」
「正直、興味は全くない…がネタにも詰まっているからついていくよ」
「やったー」
嬉しそうに飛び跳ねる天草さんを横目で見てから出掛ける準備をはじめた。
「先生ーこっちですよー」
「わかってるって」
立派な鳥居を抜ければこれまた立派で長い長い階段が見えた。
天草さんは跳ねるように軽快に登って行く。
「先生ー早くしてくださーい」
天草さんは日頃から走り回って取材をしているから体力はあるようだが、僕は家にこもって椅子と机の上で仕事をする、つまり体力などあるはずがない。
階段がつらいなんて僕はとことん若くない体力をしている。
これでも21歳なんだけれども。
「やっとついた…」
長い長い階段を登り終えてやっと賽銭箱が見えた、これにお金を入れたら小説も書きあがるだろうか。
「先生!こっちですよー」
天草さんはお蔵の方に向かっていた、しかし、なにかおかしい気がする。
「あれーお蔵、開かないよ」
「鍵が開いていないんだろ」
そうか…ここの神社の神主さんがいないのか。
「わかりました、呼んできますね」
天草さんはそう言うと神社の奥の方に走っていった。
彼女が戻るのを待って大体30分だろうか。
天草さんは戻ってこない、それどころか人の気配がしなくなった。
「おかしいな…」
流石に心配になってきた。
僕は天草さんを探しに神社の奥に行くことにした。
神社の裏で天草さんのボールペンを見つけた。
そうとう大事な物らしくいつも持っていた物だ。
そんな物を落とすくらいだ、やはり何かあったのだろう。
足下に靴の後がある、それはさらに奥の林の中に向かっていた。
さらに植木の葉の一部が大きく削れている。
「林の中にまで何の用で…」
僕は林の中に分け行っていった。
何も手がかりがないままどれくらい歩いたのだろうか。
林は思ったより広くどうやら森のようだった。
大分暗くなってきた、もしかしたら天草さんは戻っているかもしれない。
「戻るか…」
「どこに戻るの?」
「え?」
僕の目の前は夜の闇よりも暗く閉ざされた
目が覚めるとそこは見知らぬ森だった、どうやら僕は気絶していたようだ。
確かに僕は森にいた、だけど何かが違う。
ここは僕がいた森とは違う森だ、それにあの時の声は?
あれは天草さんの声ではなかった、ならば天草くんは?
僕の頭の中はぐちゃぐちゃだ。
「…勘違いかもしれない…神社に戻ろう」
薄暗い空がかろうじて葉の間から見えた。
そろそろ夜明けなのだろうか。
視界が開け赤い太陽が少しだけ見えた。
しかし、神社は見えなかった。
かわりにあったものは霧のかかった山や大きく広がる森、広い湖だった。
僕がいる場所は高い丘のようでその美しい光景はまるで幻想だった。
そう幻想だったのだ。
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